緑内障とは
緑内障は、眼圧(眼球の中の圧力)等の影響により、見える範囲(視野)が徐々に狭くなってくる病気です。高齢化社会の到来とともに、今や40歳以上の日本人の20人に一人は緑内障に罹っていると言われています。金沢市では平成18年から、成人健康診断の一端として「緑内障検診」が50歳、55歳、60歳の市民を対象に行われています。病気の原因について、以前は眼圧(眼球の内圧)が異常に高いために、視神経が圧迫されて障害され、その結果網膜の神経節細胞が減少し、それに応じて視野が狭くなるのが大半と考えられていました。ところが近年の疫学調査(日本眼科学会・多治見スタディー)では、眼圧が正常範囲にあっても、高眼圧の緑内障と同様に、視野が狭くなっていく人が大変多いことがわかりました。
緑内障の診断について
40歳を過ぎたら、各自治体や人間ドックの緑内障検診を受けられるか、またはメガネ処方などの機会に、緑内障の兆しがないか眼科専門医に是非ご相談ください。眼底の視神経乳頭を詳しく観察することによってある程度分かりますし、OCT検査(後述)や視野検査によって診断することが可能です。当院ではハンフリー・フィールドアナライザーHFAⅡを使用して、緑内障の早期発見に努めるとともに、緑内障と診断された方を、主に点眼薬で治療・コントロールし、出来るだけ視野異常が進行しないように努めます。しかし、視野検査は自覚的な検査なので、ご本人が疲れていたりご高齢で20分前後の姿勢維持が難しい場合などでは、正確な結果が得られない場合があります。近年、光干渉断層計(OCT)が普及しました。この検査ですと数秒の間に視神経線維の厚みに関する結果が他覚的に得られますので、この結果も踏まえて慎重に、本当に緑内障なのか、緑内障ならば悪化はないのか判断していきます。また、緑内障の分類には前述した正常眼圧か高眼圧かという区別のほかに、開放隅角か閉塞隅角かという区別もあります。閉塞隅角緑内障は、緑内障全体の10%程度しかいないのですが、この場合には開放隅角緑内障(正常眼圧を含む)と治療方針が大きく異なりますので(後述)、しっかりとご説明して適切に治療を行う必要があります。
緑内障の治療方針
- 点眼治療
点眼薬は緑内障の進行防止のために使用しますので、毎日決められた回数を点眼することが大切です。たくさんの種類の緑内障点眼薬がありますので、適切なものを選んで点眼処方します。現在主流の点眼薬はプロスタグランジン系と呼ばれるもので、一日一回の点眼でかなりの眼圧下降効果が期待できます。睫毛が伸びたり、瞼の縁が黒ずむという副作用がありますので、夕方の入浴や朝の洗顔の少し前に点眼して、その後暫く経ってから洗眼する習慣にするのが良いと思われます。次に位置するのがベータ遮断薬という交感神経に働く点眼薬で、これも眼圧下降効果が高いですが、時に心拍数に影響を与えたり気管支平滑筋に影響を与えることがありますので、心不全や喘息がある方には注意が必要です。点眼薬全般に言えることですが、点眼後しばらく目頭を軽く押さえて、涙道から喉の奥に薬が流れていかないようにすると良いでしょう。三番目に位置するのが炭酸脱水酵素阻害薬と呼ばれる点眼薬ですが、この他にも最近は交感神経の他の部分に効く薬や、全く新しいメカニズムの点眼薬も誕生しています。難症例の場合は金沢大学附属病院眼科と連携して治療いたします。
- 手術治療
点眼治療をしても十分な眼圧下降が得られず、視野欠損が悪化する可能性のある患者さんに関しては、慎重に検討のうえ、手術治療をお勧めさせていただく場合があります。当院で行っている手術は主に流出路再建術(眼内法)と呼ばれるものですが、これは近年手術方法の改善により、切開の幅が小さく済み、かなり短時間(約10分程度)で安全に行えるようになりました(上図)。白内障が進んだタイミングで、白内障手術と同時に行うことも可能(この場合は、水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術も可能)ですので、適宜ご提案いたします。
- 閉塞隅角緑内障への対応
これは眼球内部の水の出口である隅角が狭いタイプの緑内障で、緑内障全体の10%程度がこのタイプです。消化管内視鏡検査や手術の前投薬や心を落ち着かせる心療内科の薬でこのタイプの緑内障発作が誘発されることがあるため、患者様が内科や外科医から「緑内障はありませんか?」と尋ねられることがあります。仮に緑内障と診断を受けていても、閉塞隅角でなければこれらの薬は使えますので、ご自分の緑内障のタイプが不明でしたら眼科主治医にお尋ねください。
緑内障発作(急激な眼圧上昇、目が痛くなり、見づらくなり、充血します。)が起きてしまった場合は、YAGレーザーによる虹彩切開術を行ったり、白内障を併発している場合に白内障手術を早期に行うことで発作の軽快が可能です。