加齢黄斑変性とは
眼球を昔のカメラに例えるとフィルムに相当する部分が網膜で、その網膜の最も大切な中心部分を黄斑と呼びます。加齢黄斑変性はこの黄斑に様々な代謝産物が蓄積するなどして、最終的に障害に陥る病気です。大きく分けると「萎縮型」と呼ばれる、黄斑網膜の光センサー細胞がゆっくり衰えていくタイプと、「滲出型」と呼ばれる、比較的急に視力が落ちていくタイプがあります。この「滲出型」加齢黄斑変性は、黄斑付近の網膜の奥にある脈絡膜という血管の豊富な組織から「新生血管」という異常な血管が生えてきて、網膜の下に出血を起こしたり水が溜まったりすることで、視力が落ちていくのですが、これに対する有効な治療法は、日本では2003年頃までほぼありませんでした。しかし、まず光線力学的療法(Photodynamic
Therapy; PDT)という特殊なレーザー治療の登場によって悪化を抑制できるようになり、次いで抗VEGF療法という眼球注射療法によって視力の改善が可能となりました。当院でもこの抗VEGF療法を積極的に行っております。そして抗VEGF療法の効果が弱い場合は、先に述べたPDTという特殊レーザー治療が必要となりますが、こちらも。当院において治療提供可能です。
加齢黄斑変性の初期症状は視野の中心が歪んだり、文章を読む際に視野の中央のみがかすんで読めない、などです。心当たりがございましたら、まずは受診をお勧めいたします。
加齢黄斑変性の診断・治療方針について
診断に関しては、大抵の場合は、視力や眼底検査、光干渉断層計(OCT)、そして光干渉断層血管撮影(OCTA)で診断可能ですが、場合により蛍光眼底造影検査(この場合は連携病院にて検査)を行って診断致します。
治療に関しては、滲出型加齢黄斑変性の場合は、まず抗VEGF薬という眼球内の局所ホルモンを抑える薬剤を眼に注射する治療を行います。眼に注射をすると言うと怖がる方が多いですが、比較的簡単な手技で、すぐ終わるものです。注射に用いる薬剤が比較的高額なのですが、高額療養費制度により、患者様の所得に応じて支払い限度額というものがございますので、限度額適用認定証等について、ご加入の健康保険組合等にお問い合わせください。この治療は1か月~数か月毎に繰り返し行っていく必要がありますが、治療頻度は人によって様々です。当院では各々の患者様に最適で十分かつ最小限の通院・治療頻度を実現するために、経過が順調であれば徐々に治療頻度とともに通院頻度まで減らしていく、Treat
and Extendという方法を主に採用しております。
一方、抗VEGF薬が効きにくい場合や、その他特別な事情で注射ができない場合は、上に述べました光線力学的療法(PDT)という特殊なレーザー治療を行います。これはベルテポルフィンという光に反応する薬を点滴で全身に投与し、引き続き弱いレーザー光を黄斑の病巣に向けて照射します。どの方にも効果があるわけでなく、同じ滲出型加齢黄斑変性の中にもこの治療が効きやすいタイプとそうでないものがありますので、適応判断は慎重に行う必要があります。当院は県内でこの治療が可能な数少ない医療機関の一つです。